#13 村上博信(salz)/ジャム作家(仙台市)


誰もが持っている「自分を形成しているもの」

それをゲスト本人に5つ選んでいただき、

どういう人かを紐解いていきます。

13人目のゲストはジャム作家の

「salz」こと村上博信さんです。



知り合いが「ジャム王子、ジャム王子」と口を揃えて呼ぶ。 本人はいたってその呼び名を否定しているが。

その、ジャム王子村上氏とは、実際はどんな人物なのだろうか。


Profile

1979年生まれ、宮城県仙台市出身

2009年2月、ちいさな街のイベントにてオリジナルジャムを販売し同年4月29日、ジャム作家salz(ザルツ)として活動開始する。手づくりのジャムを通して、驚きと発見、創造性のある「食」のライフスタイルを、より多くの方々に味わっていただきつつ、食の安全性、食事をとる事の大切さを感じてもらえるよう活動している。


1、ジャム




村上:これが仕事になってしまっているから、言ってしまえば俺の100%がこれと言っても過言じゃないんですけど、毎日作ってるし、ジャム作りじゃなくてもジャムに関わる仕事をしてるから。

以前「村上さん、今の仕事やってなかったら何してます?」って聞かれたことがあって、でも全然他が浮かばなくて。そもそも、サラリーマンだった時に同じ質問されてたらジャム屋って答えたけど。

仕事なんだけど仕事じゃない、趣味の延長です。


―独立して、ジャム一本でやって行こうって決めたのはいつなんですか?


村上:4、5年前ぐらいかな。曖昧なんだけど(笑)

一番強く決心したのは震災の後から。

独立する前の仕事自体、自分にはあってないなと思ってたから。決断した時点で、本業にしてもなんとかやっていけそうという兆しが見えてたから、思い切って会社辞めて、サービス業で1年ぐらい働いて起業しました。そんなに深く考えないで始めちゃったんです。

作り始めたのは10年前で、人を通じて仕事として広がっていったんです。頑張らなくてもこれだけ広がったなら、自分の気持ちも本気で入れ込んだら仕事として、ブランドになるんじゃないかって思って。

周りの人たちのバックアップもあったし。そんなに大きなきっかけはなかったかな。


―元々お菓子を作ったりすることが好きだったんですか?


村上:両親がね、料理を作ったり家でケーキを作ってくれる親で、父親も調理師免許持ってるし。男がケーキを作る、料理をすることに抵抗はなかった。

家にレシピ本が沢山あってそれを読むのもすごく好きだった。小学生4年、5年生ぐらいの時に初めてチーズケーキを作って、美味しいって喜んでもらえて、それがすごく嬉しかったんです。それ以降よく作るようになった。高校卒業後に料理の専門学校に行ったんだけど、卒業後その道には行かずサラリーマンしながらも趣味で作り続けてた。


料理を作る環境が整ってたっていうのはあると思います。


ケーキって、あんまり自分で作ろうとは思わないじゃないですか。でも手作りして家で食べることが我が家は普通だった。だからか、小学校低学年までは太ってました(笑)丸々してた。4年生ぐらいから急に身長伸び始めたからよかったけど(笑)それぐらい食べるの大好き。だから歳と共にまた太ってきましたけど(笑)


―ザルツのジャムは種類が豊富ですよね、今何種類あるんですか?


村上:トータル100ぐらいあるんじゃないでしょうか。ちゃんと数えたことはないけど。時期に合わせたフルーツのジャムを作るから。

一応専門店だから、種類多い方が選ぶ楽しさもあるし。昔は定番の5~6種類ぐらいでやってたんだけど、今は10種類は必ず並べるし、そのぐらいあると誰でも必ず好みの味が見つかるものだし。女子は選ぶの好きですよね。


―選べる方が楽しいです(笑)

ちなみに、ジャムの開発ってどのぐらいの期間がかかるものなんですか?


村上:パッとできる時はすぐできます。食材との出会いもあるかな。農家さんと食材との出会いで、しかもちょうどいい時期に組み合わせられるものってなかなかなくて、それがうまく合わさった時は早いですよ。逆に長年迷走してるものもあるし。だからピンキリですね。農家さんから依頼されるものもある。実はそっちの方がやりやすくて、相手の依頼に対して自分が提案するっていう形がいいみたい。


2、人




村上:お客さんの反応を見てるのが大好き。ジャムってありきたりのものだから、定番の味だけだとインパクトがないなと思って、自分の好きなケーキ屋さんの組み合わせや、レストランのメニューからインスピレーションもらって作ることも多い。


うちのジャムはパッケージ見ただけじゃ味のイメージができない。


イメージできない事も楽しんでもらいたい。試食して食べてもらって、食べたことない味だと驚かれるし、好みの味だと感動される。楽しいですよね。

工房でずっと待ってるより、外出店でお客さんと触れ合える方がいい。常連さんとはジャムの新しい使い方を情報交換したりもするし。

ジャムを作る上で、果物を仕入れる時は必ず農家さんの所に足を運んで、自分が人間的に好きになれる人の食材を使いたい。


―何か新しい食材を使いたいと思ったら農家さんを見つけてコンタクト取るんですか?


村上:遠くの農家さんで会いにいけない場合でも、何回か連絡してお話ししながら決めるようにしてる。関東までは直接行けるかな。どういう物作りをしてるのかをお話し聞いて。農家さんの熱量が高くて気持ちを入れてる様な食材は使いたいなと思ってる。


僕のジャムは人伝いに広がっていってるジャムだから。


―確かに、大きな宣伝もされてないですしね。


村上:そうそう。最近はいろんな店舗さんとのコラボをさせてもらえるようになって。それも人伝いに紹介してもらったことがきっかけだったり。

若い時は人との付き合いが苦手で、ネガティブな考え方しかできない人間だったんだけど、30歳すぎて段々と前向きに考えられるようになって、今があるんですよね。


3、食




村上:結局全部繋がってきちゃうから、今更分けて話す話題でもないんだけど(笑)

食べることは毎日のことでしょ、食べないと生きていけないし。


毎日のことだから、楽しくできた方が気持ちもいい。


暗い気持ちで暗い場所で食べるより、みんなで明るく楽しく食べれた方がいいじゃないですか。毎日の食事の中で、エッセンス的にジャム使ってもらったりして、今まで食べたことないもの食べると、ワクワクキラキラする。それを別の誰かに作ってあげたいとか、教えてあげたいってなるから、毎日のことでも楽しくなる。

そういう要素としてジャムが使ってもらえたらいいなと思います。


4、楽




村上:これは「ラク」するの楽じゃなくて、テンションを上げるみたいな、楽しいの「楽」って意味で。

誰かとご飯を食べに行く時は、あえて癖のある料理を選んで食べに行きます。

ジビエとかパクチーのお店とか。うわ~臭い!とかいいながら食べる楽しみを味わいに行くんです。


毎日はできないことでも、時々の楽しいが楽しい。


―お話を伺ってると、村上さんは人の衝撃を受けてる様子とか、驚いてる様子、喜んでる様子を見るのがお好きなんでしょうか?


村上:そうそうそう(笑)


まぁ、美味しいものを作って相手が喜んでくれたら嬉しいじゃないですか。


それが自信にも繋がっていくし、モチベーションにもなるし。

仕事ってどんな仕事でも人のためにするもの、なん年後かに回り回って自分に返ってくるものが幸せっていう言葉を聞いたことがあって。共感したんです。


ただ売上が上がればいいじゃなくて、誰かの幸せに繋がるものを作りたい。


自分がやってもらって嬉しかったこと、楽しかったことを、人のためにも返していきたい。それでお金ももらえたらそれはとても幸せなことですよね。組織にいたら味わえないことかもね。


俺って、「食」以外のことでテンションが上がることがないんですよ(笑)

この間東京に行った時に気になってたパン屋さんにお昼を買いに行って、いろんなパンと食材の組み合わせを見ながらワクワクしてたんだけど、サンドイッチ買いたくて冷ケースを見たら、3種類ぐらいの中に、メロンパンの間にバターと生ハムとドライフルーツが挟まってるパンがあったの。

テンション上がったよね!!!

どんな味するんだろう?!と思って。そういうテンションの上がり方って食べ物を通じてでしかない。例えば好きなアーティストのライブでテンションが上がるとか、俺はないから(笑)


―食が趣味なんですね


村上:そうそうそう。ほんとに。仕事も趣味も、「食」なんです。

お酒も好きだしね。出されたもので苦手なものがないぐらい。アル中みたいに飲んでます(笑)


―(笑)お酒と食材の組み合わせもやっぱり好きなんですか?


村上:いいですよね~(笑)たまにやってるんだけど、ビールとパンの会っていうのを不定期でやっていて。ジャムは一切関係ないの。作ってもらったパンに俺がビールを選んで持って行って、それに合う料理を作ってもらったり。組み合わせを楽しんでもらうっていう会なんだけど。東京とかだとそういうのいっぱいあるんですよ。以前ビール屋さんに呼ばれてスイーツとビールのペアリングっていうのにうちのジャムも出させてもらったり。参加者は意外と男性も多くて、好評なんですよ。楽しいよね。


このジャムだったらこの組み合わせが美味しいとか、飲み合わせ、食べ合わせの組み合わせを自分がやってて楽しいから提案したいですね。


5、親




村上:両親がいてくれなかったら、そもそも食べることとか、作ることを好きにはなってなかった。今の自分はない。このワードは取材を受けるときも必ず出してるんだけど。


専門学校に行かせてもらって。料理界の東大って言われるぐらい大きな学校に行かせてもらって。それだけカリキュラムも充実してるし、学費も結構な金額だけど、パッと行かせてくれた。しかも卒業後にその道にも行かないし(笑)


相当親不孝だと思うけど、今こうやってジャムの道で10年仕事としてやってこれて、親孝行できてるのかなって思う。

本当に感謝しかないかな。



―最後に、将来のイメージとかありますか?


村上:将来?あんまりせかせかして生きたくなくて(笑)若いうちからのんびり生活したいって思ってて。あんまり人が入らない小さい喫茶店みたいなのをのんびり経営しながら生活していけたらいいなって思ったりする。


―ジャム作りは続けるんですか?


村上:そうですね、いつまで続けられるかはわからないけど、これを仕事にするって決めた以上年取っても続けなきゃと。


おじいちゃんが作るジャム、みんな買ってくれるかな?(笑)


ー編集後記ー


※今回のインタビューは、以前ひと×ひとを一緒に手伝ってくれていた押野が担当しています。彼女から音声データをもらい、白鳥が編集する流れになりました。本来ならば、インタビューアー本人が編集後記を記載するのですが、今回は編集者である白鳥が後記まで担当いたします。


編集していて感じた村上さんの印象は、実に職人気質であるということ、つまり真面目であるということ。一途に「好き」と向き合ってきたからこそ、10年の年月が経ちより多くの人に支持され続けているザルツ。彼を見ていると、続けることの大切さや、「好き」を追い求めることの素晴らしさを実に感じる。

他に目もくれず直向きに一つのものを追い求めるという姿勢は、自分にはないものの一つだ。自分にないものを持つ人間がとても尊いものに思える。


きっと私と同じように、沢山の人に影響を与えファンを増やしているにも違いない。

ますます飛躍する彼を今後もファンの一人として、友人として応援し続けたい。


ただ最近はお互いいい年齢なので、体に気をつけてと、母のように見守る日々である(笑)


インタビューアー 押野望佳

編集 白鳥ゆい



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